Mastercam技術情報

Mastercamによるチタン合金の加工について

チタン合金(Ti-6Al-4V = 通称64チタン)加工時の注意点、およびチタン加工時におけるMastercamの有効機能を下図の航空機部品をもとに解説します。

チタン合金の特徴

チタン合金は一般に難削材といわれており、チッピングや切れ刃の欠損、工具磨耗などの問題が発生しやすく、また化学的に活性であるため、切りくずが燃えるといったトラブルが発生することもあります。これらのことからチタンは硬い金属と思われがちですが、刃物鋼などと比べるとそれほど硬い金属ではありません。 

チタンは熱伝導率が小さいため、工具に切削熱が蓄積しやすく、これが工具磨耗の一因となります。

したがって、チタンを切削する際にはこれらのことを考慮に入れ、工具や切削油剤を選び、切削速度なども低めに設定する必要があります。

Mastercamによるチタン合金の荒加工

チタン合金の荒加工には、切削負荷を一定に保つことが重要です。工具動作に切削量(XYの切削量)が大きく変化する箇所がある場合には、切削量が多い場所にあわせた切削条件を設定する必要があります。切削速度は、「工具径50%の切削量」と「工具径100%の切削量」では30%以上の減速が必要で、工具寿命にも大きく影響します。

そこで、荒加工では工具負荷を一定に保つために、Mastercam のトロコイド機能を使用してツールパスを作成します。ツールパスは「2D HighSpeedコア荒取り」を使用します。

Mastercamのトロコイド機能により、進入時やコーナー部での工具負荷を軽減させる工具動作を作成することができます。しかし、工具負荷は軽減されてもトロコイドの円弧動作で加工時間が増大し、コーナー部で工具に負荷がかかることも完全には避けられません。「最適な加工パスは工具負荷を一定に保つこと」と説明しましたが、より具体的に説明すると「できるだけ長い距離の直線的なダウンカット切削を行う」ということになります。

 

切削はじめの工具動作
全刃切削であるため工具負荷増大

トロコイド動作により
工具負荷一定の加工動作

2DHSTコア荒取りツールパス 下の図は工具動作を生成するために作成したワイヤーフレーム

2D HighSpeedツールパスの活用

今回の加工形状はソリッドデータで作成されており、比較的簡単に形状の輪郭を抽出することができます。
2D HighSpeedツールパスはワイヤーフレームを利用した2Dツールパスなので、3次元形状を編集することなく従来のMastercamの2Dツールパスにはなかった工具動作を生成することができます。

【トロコイドスロット】 
溝切りを全刃切削で加工すると工具寿命が大幅に縮んでしまいます。 切削物の中心に最低限のトロコイド動作で溝切り加工を行います。

【輪郭加工】
通常の輪郭加工を使用し、ダウンカット一定の工具動作により溝を広げます。

【2D HighSpeedコア荒取り】
残りをトロコイドを混ぜた工具動作で荒取り加工を行います。これにより直線動作を最大限に利用したツールパスを作成できます。 

■コーナー負荷軽減機能であるスムージングの使用(2D HighSpeedコア荒取り)

直線的に加工できる領域を増やしましたが、部品形状によりコーナー部の加工は必要です。
そこで、工具動作のコーナー部にRを挿入して工具負荷を軽減します。

スムージングOFF
スムージングON

なお、スムージング機能を使用した場合、コーナーの追い込み加工が必要になります。
コーナーよりも小径の工具を使用し、輪郭ツールパスの再切削で加工を行います(下図参照)。

 

上記の加工に使用したワイヤフレーム

 

荒取り工具

使用した工具はA社のφ16超硬ラフィングです。

【A社製工具の切削条件】
側面切削 130m/min  切り込み Z:0.5D  XY:0.5D
溝切削   100m/min  切り込み Z:1.0D

工具が高価なこと、および破損時の急な調達が難しいという理由から、今回は安全を第一に条件を設定しました。

 

仕上げ加工

仕上げ加工時の注意点は、工具刃長を最大限に使用して切削することです。
チタンを加工する際は歪み逃げを計算することが大切です。たとえ仕上げでも歪んで逃げていく可能性があるため、Zステップを使用するとワークに段差がつきます(下図参照)。

 

【注意】0.01mmの段でも目視できます。
工具の刃長を最大限に使用して仕上げ加工を行うには、工具負荷も増えることから仕上げ代を限界まで抑える必要があります。
しかしチタンは歪みやすい性質を持っていることから、荒取り工程でギリギリの取り代を設定すると仕上げで取りきれないないことがあります。
ある程度段階をおいて荒加工を行い、十分な歪み取りの工程が必要になります。

例:荒取り1.0mm残し/中荒取り0.1mm 0.05mm残し

加工振動ビビリ

 

まとめ

難削材の加工では、ワイヤーフレームを使用した変更が容易なツールパス機能が特に有効になります。
品質面では歪みなどを計算に入れた工程設計。コスト・納期面では工具寿命と切削時間のバランスを考えた切削条件。これらを安全に実施し利益を出さなければなりません(加工時間が長時間になると無人運転などが必要)。

チタン合金などの難削材を加工する上で大切なのは、経験やデータの蓄積に裏打ちされた「全体的なマネージメント」であると考えられます。
※今回の加工内容は工具負荷を抑えることに力を入れていますが、切削時間の短縮が優先されれば工具寿命を無視することもあります。

以上、今回の加工に関する詳細情報が必要な際は、弊社までお問い合わせください。

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Last Update 2016-10-05
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