Mastercamユーザー事例

株式会社 由紀精密 様

「職人技のデータを落とし込み、蓄積、共有化するツール」 ――。 由紀精密工業(現:由紀精密)の大坪正人社長は、2007年末に導入したMastercamをこう位置づける。

創業からおよそ半世紀という、長い歴史の中で積み重ねてきた「職人技」という暗黙知。同社では、これら無形の資産をMastercamによって形式知化し、独自の活用方法を確立。CAD/CAMの導入は今回が初であったにもかかわらず、わずか半年で様々な効果を生み出すことに成功しているという。また、かねてより計画していたビジネスモデルの実行にむけ、このほどマシニング用モジュールを追加導入。 次代を担う若き経営者が思い描く様々な展開を具現化するツールとして、Mastercamに寄せられる期待は大きい。

今回のMastercamユーザー訪問は、神奈川県茅ヶ崎市にある同社本社工場を訪れ、大坪正人社長、 開発室・ 上野雅弘氏のお二人にお話を伺った。

まず、創業から今日にいたるまでの沿革について教えてください。

大坪社長:当社は今から約半世紀前の1961年、先代である祖父によって創業されました。創業から17年後の78年には、当時27歳だった父が経営を引き継ぎ、以来およそ30年間、当社の事業を継続して発展させてきました。

特長として、当社では創業時から一貫して丸物を主体とした加工業務を続けております。47期目を迎えた現在、丸物加工に関するノウハウはかなり蓄積できていると自負しています。

現在の主な業務について教えてください。


由紀精密工業株式会社
代表取締役社長 大坪 正人氏

大坪社長:NC自動盤や複合加工機を駆使し、様々な精密部品の加工を行っています。90年代後半までは数万ロット単位の量産加工が中心でしたが、5~6年ほど前からは高付加価値製品の小ロット加工に注力しております。
産業別に分けると、計測器・半導体関連が40%、コネクタ関連が30%、航空宇宙関連が20%となり、その他には金型部品やオートバイ部品の加工を行っています。加工材は主に鉄、アルミ、チタン、ステンレスなどですが、難削材といわれるコバール、ハステロイ、インコネルなどの加工実績もあります。

ワークサイズについてはφ2からφ65まで対応可能ですが、最近は特に小さな製品の依頼が増えています。加工後のサイズがφ1を切るような製品も珍しくなくなってきましたね。



由紀精密工業株式会社
開発室 上野 雅弘氏

上野氏:加工品の大半には旋削加工の他に穴あけ、すり割りなどのミーリング加工が入ります。複数の工程があっても、それぞれの寸法をミクロンオーダーの精度で合わせられる加工技術が当社の大きな強みですね。品質面では、主要な取引先からも多数の表彰を受けております。

 

ここからはMastercamに関連したお話を伺いたいと思います。Mastercamの導入経緯について教えてください。

大坪社長: 私が入社したのは今から1年ほど前になりますが、当時、加工はすべてNC データを機械に直接手入力して行っていました。

一方、私と上野はインクス出身で、在籍時には二人とも色々なCAD/CAMを使っていました。ご存知の通り、インクスはCAD/CAMの活用によって成長していった会社です。私自身もメリットや必要性は充分認識していましたので、入社後すぐにCAD/CAM導入の検討を開始しました。

一般的な旋盤加工がメインの企業では、プログラムがさほど複雑ではないということもあり、CAD/CAMを使っているケースはあまり多くはないかもしれません。しかし、当社では「各作業者の加工ノウハウを蓄積し、共有化する」という点に導入の主眼をおいていました。最近流行りの言葉を借りれば、「職人技のデジタル化」の実現こそが、当社におけるCAD/CAM導入の大きな目的であったと言えます。

実際に導入するシステムの検討は、展示会や訪問デモ等でいくつかのシステムを比較しながら行いました。Mastercamを採用した決め手は、機能面はもちろんですが、世界的に最も普及しているという実績面も大きかったですね。

先端0.05mm以下の電極ピン。

右にあるシャープペンシルの芯は0.5mm

外径φ0.3、内径φ0.2、
すり割り幅0.1の極小ワーク
    
複合加工機を駆使して加工された各種精密切削部品

「ノウハウの蓄積と共有化」、という点におけるMastercamの活用手法を詳しくお伺いしたいのですが。

大坪社長:まず、作業者が持つ経験や加工ノウハウを整理し、Mastercamに落とし込むという所から始めました。多くの場合、加工の際に使用する工具、切削条件、切削パターンなどは作業者によってさまざまです。 しかし、これらが規格化できれば、過去に手がけた形状や、それに類似した形状の加工を行う際に再利用が可能となります。 

そこで、先ほど挙げた加工に関する各種の必要条件をすべてMastercamに登録し、当社独自のオペレーション(加工工程)ライブラリを構築しました。登録にあたっては、当社の中で最も加工経験を持つ者のノウハウをベースとしています。すでにさまざまな製品の加工におけるライブラリが構築できておりますが、今後は加工材別のライブラリ作成なども検討しています。



登録済の加工工程を呼び出し、
類似形状の加工に利用

上野氏:加工プログラムの作成は、作成済みのライブラリを元にして行っていきます。まず、CAMでプログラムを作成する上では、当然ですが製品のCADデータが必要です。当社では、客先からDXFデータをいただく場合と紙図面のみの場合の両方がありますが、後者の場合は、MastercamのCAD機能を使用して作図作業を行います。ただ、旋盤加工では基本的に断面の情報さえあればいいので、さほど時間はかかりません。

加工形状の準備ができましたら登録済のライブラリを読み込み、その中で必要な工程を選択して加工する図 形に当てはめていきます。荒取りをするなら「荒加工」、溝形状であれば「溝切り」の工程を当てはめるといった具合です。

工程を図形のどの部分に当てはめるか、というのはまだオペレータ側で考えなければなりませんが、旋盤系の加工は図形の選択箇所がほとんど決まっていますので、特に問題なく作業を進めていくことができます。
そして、ここまでの作業が完了したら、後はツールパスの計算を行い、完成したプログラムを機械へ転送して加工という流れになります。

導入効果はどのような形で現れていますか?

上野氏:すでに確認できている効果としては、以前加工したものと類似した形状であれば、15分ほどでプログラムの作成が完了しています。従来は手作業で1時間ほどかかっていたことを考えると、かなり楽になっていますね。現在Mastercamを使っているのは私一人ですが、今後は社内への横展開を進めていく予定です。

大坪社長: さらに、ライブラリの構築によって、すでに社内で確立されている加工工程を複数の作業者がそのまま利用することが可能になります。これにより、以前は特定の機械のみを担当していた作業者が新たに別の機械を扱うことも可能になりますので、作業の分担化はもちろん、作業者のスキル向上といった効果にもつながるかと考えています。

ポストプロセッサのカスタマイズも自社で行われているとのことですが。

大坪社長:Mastercamを選択した理由のひとつに、ポストプロセッサの柔軟性が非常に高いという点があります。ユーザー側でポストを編集できるCAMは他にもあるのかもしれませんが、Mastercamはかなり自由にカスタマイズできるという話を聞いておりましたので。

上野氏:現在は、NC旋盤用とスイス型旋盤用それぞれにカスタマイズしたポストを使用しております。スイス型旋盤用のカスタマイズ例としては、ワーク長さの自動設定があります。スイス型は普通の旋盤と違い、長い材料をバーフィーダーで送りながら加工しますが、一回あたりの送り量は機種ごとに独自のGコードがあり、そこに数値を与えて設定する必要があります。
そこで当社では、カスタマイズによってMastercamからワーク長さの数値を読み取り、Gコードに直接反映させる仕組みを作りました。これによって、送り量設定の手間が大きく軽減できています。

Mastercam、もしくは当社への要望点や意見などはございますか?

大坪社長:製品の翻訳に関することですが、オンラインヘルプとダイアログボックス内の用語で若干内容が異なる部分があるように思います。同じ内容を指しているものの、日本語訳がそれぞれで異なっている部分が見受けられました。また、ポストをカスタマイズする際に参照したマニュアルも同様で、本来、英語のままでよい部分が日本語訳されている箇所がいくつかありました。日本語化におけるこれらの標記の統一化をお願いしたいですね。

上野氏:スイス型旋盤への完全な対応をお願いしたいですね。スイス型では刃物とチャック(ガイドブッシュ)の位置関係が決まっていますので、一度送った材料を再度戻して加工することができません。形状によっては材料を少しずつ送りながら加工する必要があります。作成したツールパスが送り量に従って自動的に分割される機能があれば便利になると思います。

最後に、貴社における今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか。

大坪社長:2007年の3月に、当社が考案した高精度複合加工部品の自動量産システムの開発計画が、「中小企業新事業活動促進法に基づく経営革新計画」の承認を得ることができました。

本計画では、現在進めている旋盤加工のデータベース化に加え、マシニングでの機上測定、さらに測定結果を元にした自動加工の実現が大きなポイントとなっています。実施に向けて同年4月にマシニングセンタを、そして7月にMastercamの「Mill Level-1」を追加導入(現在はMill Level-3にアップグレード)しており、すでにポストのカスタマイズも含めてある程度のレベルまで検証が完了しています。

マシニングによる機上測定の様子

このように、計画の内容はMastercamがベースとなっており、実施していく上で欠かせないツールです。最終目標である「リードタイム50%短縮」を実現させるためにも、Mastercamには大きな期待を寄せています。もちろん、「職人技を落とし込み、蓄積・共有化するツール」としても、引き続きMastercamを有効活用していくつもりです。

―― お忙しい中、ありがとうございました。

(2007年7月訪問)

■DATA ■■■■■■

株式会社 由紀精密   http://www.yukiseimitsu.co.jp
〒253-0084 神奈川県茅ヶ崎市円蔵370
TEL.0467-82-4106 FAX.0467-86-9614
【設立】 昭和36年7月
【代表者】 大坪 由男会長、大坪 正人社長
【営業品目】 複合加工機、NC自動盤による各種精密切削部品製造

【使用しているMastercamのモジュール】
・Mastercam Lathe×1ライセンス
・Mastercam Mill Level-3×1ライセンス  

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Last Update 2016-10-05
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