Mastercamユーザー事例
株式会社 大脇金型製作所様
オールラウンドプレーヤーの多さが当社の強み
神奈川県川崎市で、35年にわたりダイカスト型を中心とした各種金型の製造を営む株式会社 大脇金型製作所。 同社がMastercamを導入したのは今からおよそ10年前。3次元データの普及が本格化する以前からMastercamを活用した金型加工に着手し、高硬度材が相手のダイカスト金型加工において、独自ノウハウを構築してきた。
「加工とCAMの双方を理解していなければ、ダイカスト型のような高硬度材は削れない」と考える同社には、データ作成から加工までを1名で完結できる社員が多い。現在も新たな人材の育成に乗り出しており、Mastercamの活躍の場は今後もますます広がりを見せていきそうだ。
今回のMastercamユーザー訪問は、同社本社工場を訪れ、大脇雪夫社長・大脇正稔専務のお二人にお話を伺った。
まず、創業から今日にいたるまでの沿革について教えてください。
大脇社長:当社の創業は今からおよそ35年前の1972年10月です。県内の鋳造品加工メーカーに10数年間勤めた後、独立してこの会社を立ち上げました。
創業時は3名でスタートした会社ですが、おかげさまで仕事にも恵まれ順調に事業を拡大することができ、現在は11名の体制で業務を行っています。昨年10月には資本金を増資し、株式会社へ改組をしております。
現在の主な業務について教えてください。
大脇社長:ダイカスト金型を中心とした各種金型の設計および製作を行っています。一部プレス型やプラスチック型もありますが、全体の80%以上はダイカスト型が占めています。 金型の種類としてはカメラのフレームやレンズ周りの製品といった光学機器関連がメインですが、自動車や電子機器、通信機器、空圧機器関連向けの金型なども手がけております。
大脇専務:手がけている金型のサイズは小さいもので型締力8トン、大きなものでは型締力1000トンクラスにもなります。製品の種類もそうですが、サイズについても幅広く請け負っています。
ここからはMastercamに関連したお話を伺いたいと思います。 まず、Mastercamの導入経緯について教えてください。
株式会社 大脇金型製作所
大脇 雪夫社長
株式会社 大脇金型製作所
大脇 正稔 専務
大脇社長:当社のMastercam導入は、今から10年ほど前になるかと思います。その時期での3次元CAD/CAM導入は、業界全体から見てもかなり早いタイミングだったのではないでしょうか。なにしろ、当時は大手でもまだ3次元化が進んでおらず、逆に3次元化について大手の方が相談に来られたこともあったくらいですから。
大脇専務:金型メーカーは、あらゆる加工業の中でも常に先を走っていなければならない存在であると思っています。当時は3次元データがさほど利用されていなかった時代ですが、今後金型加工を行っていく上で、3次元CAD/CAMは必須であるとの考えは以前から持っておりました。
大脇社長:実際の導入にあたっては、様々なシステムを比較検討しました。最終的にMastercamの導入を決めたのは、世界的に導入実績が豊富であり、将来性に大きく期待できると考えたためです。当時、仕事の関係でやり取りのあったシンガポールでも、Mastercamを使っている会社は多いという話をよく耳にしておりました。また、お付き合いのある商社の方に強く薦めていただいたことも、Mastercam導入の大きな決め手になりましたね。
大脇専務:加えて、価格面でのメリットも大きかったですね。当時の3次元CAD/CAMは非常に高価なものが多かった中、Mastercamは手ごろな価格帯で導入が可能でしたから。当社で最初に導入したのはマシニング用のMill Level-3(同時3軸加工用)です。導入してから数年間は1ライセンスで業務を行っていましたが、オペレーターの増員と併せてMastercamも増設し、現在はMill Level-3を3ライセンス使用しております。
「将来性」というお言葉がでましたが、Mastercamはご期待通りの進化を遂げていますか?
大脇社長:導入当初から比べると、現在のバージョンはずいぶん良くなっていますよ。以前なら対応できなかった機能についても、徐々に改善されてきているかと思います。
大脇専務:CAD/CAMはユーザーの声を聞きながら発展していくシステムだと思います。逆に言えば、課題がないと発展はそこで止まってしまうでしょう。MastercamのCAD機能についてはぜひ強化をお願いしたい部分もありますので、課題を解決しつつ、今後も継続的な進化を続けていって欲しいですね。
貴社でのMastercamを活用したNCデータ作成の流れについて詳しくお願いします。
大脇専務:当社では、主に製品形状部の彫り込みと電極の加工にMastercamを使用しています。加工対象となる製品データは、客先から3次元データの支給を受ける場合もあれば、紙図面のみを支給される場合の両方があります。
形状を確認したら、まずはMastercamのCAD機能を使ってモデリング作業を行います。紙図面のみの場合は当然ですが、3次元データを支給された場合でもキャビ・コア分割や抜きテーパー付けなどの処理を加え、加工のためのモデル形状へ修正する必要があるためです。
モデリング作業が完了したら、今度はMastercamのCAM機能を使用して、ツールパスからNCデータ作成までを行います。なお、当社では工作機の横にノートPCを設置しており、工作機へNCデータを送る前に、ビューワソフトで一度データを確認してから加工に入ります。どんな加工でもそうですが、特に金型、それもダイカスト型の場合は1つ間違いがあるだけで取り返しがつかないことになってしまいますからね。


Mastercamでの作業風景→機械での加工
大脇専務:ダイカスト型は高硬度な材質を使用するため、加工には非常にシビアなNCデータが求められます。必要条件をきっちりと網羅したNCデータでなければ到底削ることはできません。
その点、Mastercamは全自動的なCAMではなく、オペレーターが思い描くツールパスを的確に反映することのできるCAMだと思います。高硬度材の加工を行う際に必要な条件付けもオペレーター側で詳細な設定が可能ですので、ダイカスト型の彫り込みにも幅が広がりました。その他にも、Mastercamの導入前は工程を何回かに分けていた仕事が、導入後は1工程で済むようになるなど、様々な面で効果が出ています。
大脇社長:もっとも、金型加工は3次元CAD/CAMでなければ対応できない部分が多い仕事です。当然、持っていなければ受注にも影響が出てきます。3次元CAD/CAM導入の際、当社はMastercamを選択しましたが、改めてこの選択は正しかったと思っています。
貴社ではCAM操作から機械加工までを一人の方が完結する体制をとっているということですが?
大脇専務:Mastercamそのものは、初めにコツさえつかんでしまえばその後はさほど苦労しないで使っていけます。しかし、金型加工はギリギリまではっきりとしない部分があるため、なかなか教科書どおりには行きません。CAMの操作だけではなく、加工についても併せて理解していなければ思い通りに加工するのは難しいですからね。
大脇社長:当社ではMastercamを扱える者は現在4名おりますが、いずれも機械加工までを担当しています。工作機械とCAMの双方を扱える人材が豊富な点は、当社の大きな強みであると思っています。
Mastercam、もしくは当社への要望点や意見などはございますか?
大脇社長:技術サポートの質については満足しておりますので、今後はぜひとも「24時間・年中無休」のサポート体制を整えていただきたいと思います。工作機械メーカーでは徐々に採用され始めていますが、同様のサービスがMastercamでも実現すればずいぶん助かります。
大脇専務:新しい技術情報に触れられる機会をぜひ増やしていただきたいですね。先日のセミナーで紹介されていた「Mastercamの便利な機能」などのように、実践ですぐ使える機能や役立つ機能を紹介する場を定期的に持っていただければありがたいです。
最後に、貴社における今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか。
大脇社長:金型メーカーはCAD/CAMの登場によって生産性が大きく向上しました。しかし、今は生産性の向上だけでは利益へ直結しにくい時代となってきています。特にこれから先、中国をはじめとするアジア各国がますます台頭してくると、価格では太刀打ちできなくなってくるのは間違いありません。
しかし、当社は加工とCAMの双方を理解できる人材が豊富であるという強みがあります。この強みをさらに磨きあげるため、ただいま人材の育成に力を入れているところです。現在、当社には機械加工とCAMの専任担当者がそれぞれ1名おりますが、今年中にはこの2名が機械とCAMの両方を扱えるよう教育を進め、合計6名がオールラウンドに対応可能となるよう計画をしています。

―― お忙しい中、ありがとうございました。(2007年4月訪問)
ユーザーデータ
〒213-0006 神奈川県川崎市高津区下野毛2-11-5
TEL 044 811 0261 FAX 044 822 1105
【設立】 昭和47年10月
【代表者】 大脇 雪夫 社長
【営業品目】
・各種金型 (ダイカスト型 ・ プレス型 ・ プラスチック型)の設計および
製造
・Mastercam Mill Level-3 ×3ライセンス
・Moldplus(金型設計支援用オプション)×1ライセンス
【ものづくり共和国】
川崎市下野毛地域の若手経営者が運営するものづくり情報交換サイト。
大脇専務も運営に参画されている。